シャンドライの恋
(1998年 イタリア映画 監督=ベルナルド・ベルトリッチ 出演=サンティ・ニュートン、デヴィット・シューリス他)

  

 
  イギリスの作曲家とアフリカの女子学生。場所はローマ。祖国から亡命して医学を学ぶ彼女は彼の使用人になる。男が女に恋をする。恋を告白した男は「女は結婚していて、夫は獄中にいる」ことを知る。
 映画「シャンドライの恋」(Besieged 1998年 ベルナルド・ベルトルッチ監督 クレア・ペプロー/ベルナルド・ベルトルッチ脚本)は、こうした状況に追い込まれた男の行動と女の心の動きと葛藤を描いていく。
 古い住宅のらせん階段を通して響きわたるピアノの音も手持ちカメラを多用した映像も美しい。ショパンやグリークのピアノ曲、1960年代はじめのモダン・ジャズ、それに現代アフリカのリズムが交錯する。揺れ動く人の心を、セリフ以上に、浮き彫りにする。
 「結婚してくれ。何でもする。何でもするから、ぼくを愛してくれ」
 「それじゃ、夫を牢獄から出して!」
 男は、女が幸せになるならと、作曲の糧になる大切なピアノまで処分してしまう。男の工作が功を奏し、政治犯の夫は自由を獲得する。
 究極の愛--‘自分以外の者に対する愛’は、相手に通じるものだろうか?
 ベルトルッチは、15年以上前に書かれたイギリスの作家ジェイムズ・ラスダンの短編小説を94分の映像に甦らせた。その演出方法はシンプルにまとめあげられている。シンプルであるがゆえに訴える力も強い。
 彼の往年の名作ラストタンゴ・イン・パリを超えるかも。          

  

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