C240の快適な旅

  

新型Cクラスは手触りの良い機械

 メルセデスというクルマはいつの時代も人々を満足させてきた。少し前までは、‘過剰’?品質を武器にして。が、‘高品質だが高価格’は過去の話。今、クルマに求められるものは、高性能、低燃費、耐久性、リーゾナブルな価格、一歩進んだ機能。言ってみれば、移動のための手触りの良い機械なのだ。
21世紀を前に7年ぶりにモデルチェンジしたCクラス。
どこがどう変わったかを見極めるのは一つの冒険/探検に等しい。
こんなライトを見たことある?とばかりに、ロービーム、ハイビーム、方向指示のライトが一体化されたハウジングに納められている。 前衛的なオブジェみたいに曲線が複雑に組み合わさって美しい。それでいて、ラジュエータ−・グリルはほとんど変わっていない。見慣れたメルセデスのお面。運転席からは座高の低い人には見えにくくなったが、鼻先のスリー・ポインテッド・スターもちゃんとある。
ドアを開けると足元が異常にゆったりしている。座って、キイをひねる。すると、低いモーターのうなりと共にシートが移動して運転ポジションに。それからドアの内側にあるシートの断面をした‘つまみ’に触れて、シートの角度をあなたの好みに合わせれば、あとはアクセルを踏むだけなのだが、ここでまた新しい発見がある。マニュアルシフトにも似たミッションのレバーは、もちろんオートマチックなのだが、これまでの曲がりくねったゲートの間を前後に動かすモノではない。パーク(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)、ドライブ(D)しかなくて一直線に動く。Dに入れてから、好みに合わせて左右に動かして1から5までのギアを選ぶ。シンプルで軽い。 センター・コンソールもすっきりした。2人分のカップホルダーは見事に収納されていて、使わなければ、その存在にも気がつかない。メーターは中央にスピードメーター、左にエンジン回転計を、右に燃料計を配するだけ。
エンジンが回っていて、ガソリンがあり、走っているスピードが分かればほかの情報は要らないというのが設計者の主張。セダンにもスポーツカーのようにエンジン回転計があると興奮した時代はいつのことだったろう。メインテナンス時期やクルマの周りの状況は「トランク ガ アイテイマス」「レイキャクスイ レベル ヲ テンケン シテクダサイ」「トランスミッション N ニ シフト シテクダサイ」などとシンボル付き文字で示してくれる。
クルマとは、ドライバーに移動のための快適な空間を与えればいい、余計な神経を使わせないようにと考えられている。そのいくつかの例:暗くなれば自動的に点灯するライト、雨が降り出せば動き出すワイパー、外気温と太陽の差し込む角度に応じて変化する室温など。ステアリングにラジオやステレオのコントロールがあったり、サイドミラーに方向指示ライトを組み込んだり、上級車種Sクラスそのものである。 新しいCタイプは「こういうメルセデスが欲しい」という乗り手の要望に応えている。 あなたの生活のなかで、頭の延長としてのコンピュータがあるのと同じように足の延長として、これがあれば、あとは良い天気と少しの幸運があるだけで人生は楽しい。

・メルセデス・ベンツC240 全国希望小売価格:500万円(税別)
 2、597cc V6エンジン(170馬力)電子制御5速AT変速機。
 10・15モード燃料消費率:9.5km/リッター
          

  

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