メルセデスE320の快適な旅

  

アバンギャルド女性にぴったり

 とにかく、軽い。軽いのだ。ハンドルもアクセルもブレーキも。そして、このサイズの乗用車とは思えないほどのスポーテイーな走り。全体をほっそりとスリムにして、楕円形のヘッドライトにウインカーライトを組み込んだフロント。オレンジ色のウインカーが点滅するさまは、ちょうど‘長いまつげのメルセデス嬢’。
 Eタイプは、1995年秋に発表されてから、世界で100万台売れた。小形ベンツ190、コンパクトEクラス、それにCクラスに続いて4つ目のミリオン・セラー・メルセデスである。日本では、2000年5月までに 59、153台の“長いまつげのかわいこ”ちゃんが登録された。これは同じ期間に登録されたメルセデスの約20%に当たる。
 Eタイプ開発の最大の目標はコストの削減と軽量化だった。現代の自動車メーカーの苦悩が見えてくるキーワードではある。しかし、終わり良ければすべてよし。お金はかけないで、ダイエットし、それでいて、外観は質感がある。
 ということは、現代の進んでいる女性たちの意識に通じるのではないか?それゆえに‘飛んでいる’オシャレな女性に似合う。キャリアを持って、生活にある程度の余裕があって、毎日をキビキビと生きている人、たまには、トレンディなレストランで食事を楽しみ、プロフェッショナルに仕事をこなす人のための車。そう「アバンギャルド」(前衛)な人に向けた車だ。彼女たちは言うだろう:「シートヒーターもあるし、空調の具合が最高」「ハンドルの切れがよくて、あんまり運転が楽なので、車の大きさを感じない」。
 ナビゲーションは、今や、めずらしくはないが、オプションでつけられるイーコール (E-Call)という緊急通報システムは‘かよわい’女性にとって心強い助っ人になる。イーコールは、不幸にして事故が起こり、車が横転したりエアバックが開くと、システムが即座に作動、センターへ自動通報する。
 テストということで、箱根をドライブ中、‘緊急スイッチ’を押してみる。
「こちらはイーコール・センターです」
「今、どこにいるかわかりますか?」
「箱根の仙石原ですね。車はE320ですね」
 というわけで、衛星を使って見つけだした車の位置は誤差3メートル程度。思わぬ事故でパニック状態になると、男女を問わず、人は電話番号さえも思い出せないこともあるのだが、救援が来るまでの間、イーコール・センターではドライバーに適切なアドバイスを続けてくれる。
予約したレストランの電話番号を入力して、場所を探すだけがカーナビではない。イーコールは、楽しいことの裏腹にある‘世の中で起こり得る悲劇’にも対応している。車の安全性をハード面だけでなくソフト面からサポートしている。 メルセデスは‘自動車を取り巻く環境まで製造’してしまうメーカーでもある。  


・メルセデス・ベンツE320(アバンギャルド)。全国希望小売価格:755万円。
3199cc V6エンジン(224馬力)。
左/右ハンドル。・5速A/T。
10・15モード燃料消費率:8.9km/リッター。                               

  

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