単なる箱ではなくなったパソコン

  

 
 「ソフトがなければただの箱」といわれたのがパソコンだった。そういわれてから何年経ったろう? その頃、パソコンは確かに箱だった。オフィスで使うなら箱でよかった。
 今はインタネット、Eメイルの時代で、パソコンは家庭でも使う。
 そうなると、デザインが問われる。居間や食堂、あるいは玄関の隅に‘さりげなく’置いてあっても違和感がないようなまとまった形でなければならない。
 NECのsimplemは一見したところ薄型のテレビだ。エメラルド・グリーンが基調の‘シンプル’なデザイン。15型カラー液晶画面を組み込んだ本体の厚さはわずか8センチ足らず。キーボード、マウス、インタネット・パッドと本体は無線でつながっている。本体から出ているコードはわずか1本。そのコードには電源と通信用の電話ケーブルが入っている。
 これを見て、私ならこんな風に使うだろうな、と想像する。
 居間のどこかに本体を置く。キーボードやマウスなどはサイドボードの中にでも隠しておく。妻はパソコンをやらないから、彼女はCDを聞いたり、DVDを観るのに使う。たまには、‘ねこが喜ぶソフト’でも映してペットのご機嫌をとることもできるだろう。
 そこへ友人が訪ねて来る、とする。
「あれ、テレビ買ったんですか?薄くて格好いいですね」
「今、 DVD で『マイ・フェア・レデイ』を観ていたの」と妻。
「オードリー・ヘプバーンですか?フィレンツェでオードリー展があったそうですね」
「本当?じゃあ、インターネットで見ようか!」
 私はインターネット・パッドを取り出してボタンを押す。鮮明で、きれいな画像が瞬間的に現れる。
 テレビのように見えていたものが突然パソコンに早変わりしたのだから、友人は驚きを隠せない。
 「メールが来るとね、このランプがつくんだよ」画像の下の小さなメール確認ランプを指でさしながら、私はちょっと得意になる。
 simplemは家族の1人ひとりが、好きな時間に、好きな機能を使って、思い思いに使うことができる情報ツールなのだ。
 ただの箱だったパソコンは箱以上の価値になった。パソコンの枠を越えた便宜さを提供する。これまでは別々に購入していた機能:見る、聞く、調べる、連絡する、が一つにまとまった。「オール・イン・ワン」が実現したのである。

  

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