ルノー・トゥインゴ

  

「トゥインゴは金魚鉢!」

 

エアコン調節ボタンがバナナの形をしている。 スピードメーターは数字がチカチカと変わるデジタル式。そして、 ラジオのアンテナは左ドアのキャッチに斜めに無造作に付いている。
これだけで、斬新性を感じてしまう。しかし、もっとよく見たり、乗ったりしてみると、ルノー・トゥインゴがいかに未 来指向のクルマであるかが分かってくる。これは21世紀のクルマなのだ。
ある年代の日本人にとって、ルノーという車は、郷愁以外の何物でもない。ポルシェ博士が設計したルノー4CV (750ccリヤーエンジン/4人乗り)は、1950年代から60年代にかけて日野自動車でノックダウン生産され、VW ビートルにも似たキビキビした性能で当時の若者たちの心を捕えた。
映画「昼さがりの情事」で音楽学校に通うオードリー・ヘプバーン扮するアリアーヌのボーイフレンドは、サンルー フ付きの4CV を持っていて、アリアーヌはチェロの一部を天井から出して、この車に乗り込んでいた。
そのアリアーヌが現代にいるとしたら、彼女は最新型のルノー・トゥインゴを見て、こう言うかも知れない。「金魚鉢 の中にいるみたいね」
中にいる人は、水中の金魚のように自由に泳ぎ回る。誰かと夢を語るもよし、もしかして、恋を語るもよし。アリア ーヌと一緒に乗ることが出来たら、どんなにステキなことだろう!
トゥインゴには、外観から感じる以上の室内居住性がある。
さめの歯型に似たドアハンドルを上げて中に入ると、そこにあるのは、メルセデスにも匹敵する空間である。実測 した室内空間は、約 2m x1.3m x1m(全長x全幅x全高)。 メルセデスS600セダンと比較すると、1,970mm x1,595mm x995mm と、幅が30cm狭いだけで、ほとんど寸法が違わないことが分かる。メルセデスにはセンター・ コンソールがあるためで、トゥインゴにはない。そのかわりに、いくつものモノ入れをインストルメント・パネルのまわ りに設けている。インテリアはメルセデスのような豪華さはなくても、簡素で機能的になっている。乗り込むと、「旅 行から帰って来て、久しぶりに入る我が家」のような懐かしさを感じる、と言ったヒトがいた。
それから、この車はマニュアル・シフトである。それも、クラッチペダルがないから、ドライブはアクセルから足を離 して、前進5段のギア・チェンジをする。アクセルを離すとエンジン・ブレーキが掛かる。このフィーリングは昔の欧 州車そのままなのだ。オートマチックが当り前の日本で、これを運転すると、ちょっとしたヨーロッパ気分を味わえ る。
10ー15モード燃費は17.6km/l と発表されている。ガソリンタンクは40リッターだから700キロも走る計算にな る。おまけに価格は愉入車の中では最も安い129万円。それもパワーステアリング、パワーウインドウ、セントラ ルロックなどは標準装備。
要するに、ルノー・トゥインゴは、ハードもソフトも、先進的でスゴクおしゃれな車だ。

  

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