SLKエッセイ(1)

  

「バリオ・ルーフで夢がかなった!」

 
  ぼくがSLK の開発と存在を知ったのは、1994年暮のこと。プロトタイプを斜め上から撮った写真を見た。その美しかったこと。そのときにぼくの心は決まっていた。
 運転歴は40年のぼくは、そのうちの30年をメルセデスに乗っている。東京オリンピックの少し後の1966年ごろ10万キロも走った190に魅せられて以来、220SE, 240D, 280SE と乗り継いで来た。そんなぼくが、またしてもメルセデスSLK 230を買ってしまった。5台目のメルセデスである。
 SLKの何がいいのか? それはバリオルーフ。 
 センター・コンソールにあるスイッチひとつでステイールのルーフが開閉する。わずか30秒足らずでクローズドにもオープンにもなるクーペ。そういう車がぼくにとって夢だった。
  SLKが初めて日本へ来た今年1月、東京のベイ・エリア有明の輸入車ショーで、ぼくはSLKのルーフが実際に動くのをみた。
 あこがれの‘彼女’は、想像していたより大きかった。ポーラーホワイトの色白のレデイだ。会場で見た途端「屋根を開けてみせてください」と思わず叫んでいた。モデル嬢が運転席に座り、スイッチを押す。サイドウインドウが下がる。トランクリッドが開く。音もなくルーフが後方へ移動を開始する。ルーフがトランク内へ滑り込んでいく。トランクリッドが元のように閉まる。サイドウインドウが上がる。この間、約25秒。閉めるときは、ちょうどこの反対の動きとなる。
 息をのんで見守っていた観客から感嘆の声がもれる。感動と興奮をそこにいる人すべてが感じたに違いない。よくぞ、こういうものを造ってくれたという敬意であったろう。
 そして、2月末の納車。エメラルドブラックのSLKはぼくの家にやってきた。輸入車ショーで見た色白の彼女でない、もっと大人びたシックな淑女である。ボンネット上の2つの‘ふくらみ’がすごくかわいい。     
 (97/3/1)

  

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